エッセイ 第2回 ティピの教え 文/北山耕平

第2回 ティピの教え

文/北山耕平
  • Section 02いまに生きる「ティピ」
 みなさんはティピを知っていますか?
 ティピはアルファベットで「TIPI」とも「Teepee」とも書かれることがあります。
 この夏、さまざまなところでティピを目撃した人も多いかもしれません。
 日本でもテントのかわりにティピを貸してくれたり、ティピ専門にイベントのランドマークとして設営したりするキャンプ場や、製造販売するメーカーもあります。言えることは――、一度これを見た人は、感動し清楚ですっきりとしたあの形態を絶対に忘れないでしょう。

 キャンプ場で、野外のイベント会場で、普通は厚手の白い帆布(キャンバス)で形作られた三角錐のソフトハウスで、大きさにもよりますが、最低3本か4本以上、最大で20本ほどの、乾燥させて皮を剥いだまっすぐな松の木の長い棒を、日本では利便性から物干し竿のような竹の棒を、ロープで組み合わせて柱にし、そこに専用の白い帆布を巻きつけて家にしたものです。おそらく、美しく建てられたティピは、人の作ったシェルターとしても建物としても、もっとも「絵」になるもののひとつであるはずです。

 アメリカ・インディアンについて関心ある人は、インディアンはみんなティピで暮らしていると思い込んでいる人もすくなくないかもしれません。
 しかし、そうではないのです。現在のアメリカ・インディアンとされる人たちは、ほとんどが現代的な家やアパート、コンドミニアムに暮らしています。これは、普通の21世紀のアメリカの人となんらかわりません。
 でも、そうした人たちの中には、いわゆるティピを庭に建てて、そこを儀式の場所にしたり、個人的な瞑想をスペースにしていたり、コミュニティーのイベントの場として提供しているケースもあります。

 ネイティヴ・アメリカンでも、スー、ダコタ、ナコタ、ラコタ、シャイアン、ブラックフット、クリー、アリカラなど「平原インディアン」と呼ばれる人たちが、冬暖かく、夏涼しい家として、長く、歴史の始まる前から使い続けてきた伝統的な家、それがティピなのです。
 もともと彼らは、キャンバスではなく、大きなバッファローの毛皮を幾枚も用いていました。大平原で無数の、何百万頭ものバッファローたちのなかで暮らしていたのですし、そのバッファローが彼らの暮らしのすべてを、衣食住の基本的な部分のすべてを支えていました。

 もちろん、西半球のネイティヴの人たちにはティピとは異なるいくつものシンプルな住居に暮らす人たちもたくさんいました。石と木で作られる「アドベ」やその一種である「ホーガン」、木の細い枝と枯れ草や土で大きな土饅頭のように地面から半球形に建てられた「ウィグアム」、氷の塊で作る「イグルー」など、家の形態はさまざまです。
大自然に溶け込むシェルター、「ティピ」。※写真はイメージです
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